寿司屋のちらし丼で思う、サーモンのこと

いやあ、たまには寿司屋のランチもいいもんだ。

今日は近所の店で、暖簾をくぐった。テーブル席には数人が陣取って、にぎりを肴に一杯やっている。うらやましいねえ、昼間っから。こっちは仕事の合間、ぐっとこらえて、カウンターに腰を落ち着ける。

「ちらし丼、ひとつ」

おもむろに注文すると、待つことしばし。丼がやってきた。これで八百八十円。ご時世を考えれば、ずいぶん頑張っているな、と感心する。昔はワンコイン、五百円でいけたんだが、まあ、しょうがない。

赤、白、橙、緑…さまざまな色の魚の切り身が、錦絵のようにご飯の上にちりばめられている。箸をつけ、一切れ口に運ぶ。マグロの赤身が、ちゃんと、うまい。うまい、というより、しみじみと「ちゃんとしている」。寿司屋のマグロとは、こうでなくちゃいけない。

丼をかきこみ、みそ汁を啜り、ふと、思い出した。

行きつけの、ちょっと頑固な江戸前寿司の親方が、言っていたんだ。

「サーモンなんて、寿司じゃねぇ!」

なるほど、そう言われると、いままでは食指が動かなかった。でもイクラだって、江戸前じゃないじゃないか、と心の中でツッコミを入れながらも、まあ、職人の意地みたいなもんだろう、と納得していた。

だが、最近どうも、その「サーモンなんて」という言葉が、逆に気になり始めた。食べたことがない、というのは、人生の半分を損している、という気もしてくる。

いや、損は言い過ぎか。でも、一度くらいは、この舌で確かめてみるか、という、奇妙な衝動が湧いてきた。

次に来たときは、ちらし丼はやめて、にぎりのサーモンを、こっそり頼んでみるのもいいかもしれない。そして、もし親方に見つかったら、なんて言い訳するか、今から考えておくのも、また一興だ。

うまかった。また来ます。

ぐるめ寿司 鶴見市場店回転寿司 / 鶴見市場駅八丁畷駅
昼総合点★★☆☆☆ 2.5

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