【閉店】香港麺 新記 虎ノ門店で香港麺

虎ノ門を離れる日の午後、僕は少しだけ寂しさを抱えながらビル街を抜けた。しばらくはここに来る用事もないだろう。だったら最後に、何か美味しいものを食べて締めくくりたい。そう思うと足取りは自然と軽くなって、気づけば小さな香港麺の店の前に立っていた。

頼んだのは海老ワンタンと魚のすり身の入った汁あり麺に、ルーロー飯のセット。日本式の麺も選べるが、ここはもちろん香港麺だろう。狭いカウンターに腰を下ろし、少しだけ空気のざわめきを聞いていると、すぐに丼がやってきた。

目の前には、驚くほど細い麺。ひと口すすれば、スープはあっさりしているのに確かな輪郭を持っていて、細いのにしっかりとコシを感じる麺がその輪郭をなぞるように舌に残る。海老ワンタンは大きなものが二つ、つみれ団子が二つ、そして蒲鉾のように形を整えたすり身が二切れ。ひとつひとつに違う食感があり、それぞれに静かな存在感があった。途中で辣油を垂らすと、スープに少しだけ熱を帯びた影が差し込む。

ルーロー飯は濃いめの味付けで、優しいスープの余韻とよく合った。匙を置いたあと、気づけば丼の底までスープを飲み干していた。デザートの杏仁豆腐まで付いて八百五十円。値段のことなんて普段あまり気にしないけれど、この満足感と釣り合っていると思った。

虎ノ門と僕との関係は今日で一区切りだが、この店とはまた会う気がしている。そう思いながら、小さな「ごちそうさま」を胸の内でつぶやいた。

――また来るよ、と。

香港麺 新記 虎ノ門店中華料理 / 虎ノ門駅虎ノ門ヒルズ駅内幸町駅
昼総合点★★☆☆☆ 2.5

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