ちょっと温泉に行ってきました。箱根湯本、肉のKINOSUKEで肉肉しいハンバーグ。

どうも体の調子がおかしい。内側の歯車が微妙に噛み合っていないような、そんな違和感がずっとつきまとっている。とくにめまいがひどい。頭の中で小さな回転木馬がキリキリと回っているみたいだ。カミさんが「温泉にでも浸かったら?」と言った。声に棘はなかった。ああ、そうか、温泉。湯気とぬるいお湯と時間の緩慢な流れ。

というわけで箱根に向かった。箱根湯本駅に降り立つと、どこか夢の中にいるような、ゆるやかな地形と観光客のざわめきが僕を包みこんだ。フラフラと歩いていると、「村上二郎商店」という古風な名前の梅干し専門店が目に入った。酸っぱい梅干しが無性に恋しくなって、昔ながらのやつをひとつ買う。袋の中で梅干しが「ようこそ」と言ってる気がした。

昼近くになって腹が減った。表通りは人が多すぎる。ノイズが多い。一本裏に入った。静かな通りに、すんごい入り口の店を発見した。入るしかないでしょう、と思った。

中は思ったよりも広くて、肉を焼く匂いが漂っていた。ハンバーグとビールを注文。ビールは、まるで数週間ぶりに聞くビル・エヴァンスみたいに体に沁みた。グラスの中で泡が小さく弾けて、僕の内側のなにかをそっと撫でた。

やがてハンバーグが来た。熱々で、しっかりとした肉の噛みごたえ。でも、あまりジューシーではない。ジューシーさをどこかに置き忘れてきたような感じだ。まあいい。肉には肉の、人生には人生の硬さがある。

腹を満たした僕らは旅館へ向かった。どこかで見たことがある気がしていたが、やっぱり前にも来たことがあった。記憶の中の風景が、静かに現実の輪郭と重なった。

温泉に浸かる。お湯は無言のまま、僕の疲れた細胞ひとつひとつに話しかけてくる。ざぶん。ざぶん。ときどき遠くで鹿が鳴くような音がした気がする。

上がった後は部屋飲みで二次会。冷たい缶ビールと、持ち込んだナッツと、意味のない会話。めまいが消えてくれればいいのだけれど。でも、まぁ、急がなくてもいいか。世界はそう簡単に直らないし、僕もそう簡単には壊れない。

肉のKINOSUKEステーキ / 箱根湯本駅塔ノ沢駅
昼総合点★★☆☆☆ 2.5

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