もはや天然記念物のどさん子ラーメンでみそチャーシュー麺
もはや半ば都市伝説のような存在になりつつあるラーメンチェーン、「どさん子」。漢字の“子”であって、ひらがなの“こ”ではないというあたりに、何かしらの哲学的な意味を勝手に感じてしまう。地方に行けば、まだその痕跡が残っていたりする。山口県内にもいくつかFC店があるらしく、午後の散歩の途中、ふらりとその一つに立ち寄った。
「どさん子といえば味噌ラーメンだろう」と、誰に言われたわけでもなく、頭の片隅にある刷り込みに従ってみそチャーシューを注文した。ちょうど昼どきで、店内はほぼ満席。地方都市のラーメン屋にしては活気がある。いや、むしろこの時代において“どさん子”で人が集まっているという事実に、奇妙な安心感すら覚える。
しばらくして、僕の味噌チャーシューが運ばれてきた。湯気とともに立ち上る味噌の香り。レンゲですくって口に運ぶと、「ああ、これこれ」というデジャヴのような感覚が舌に蘇る。特別じゃない。でも忘れられない。そんな味だ。チャーシューは香ばしく、脂が静かにとろけていく。麺はやや縮れ気味で、いい具合の硬さ。スープとの相性も悪くない。
気づけば、35年前、まだ高校生だった頃、何度も通ったどさん子の記憶がふいに蘇ってくる。でも正直、当時の味がどうだったかなんて、もうまったく思い出せない。ただ、いま目の前にあるこの味は、ちゃんと美味かった。それだけで充分だと思う。
ごちそうさま。さて、腹も満たされたし、もう少しだけこの町を歩いてみよう。空はやや曇りがちで、風が少し湿っている。でもそれが、なんだか悪くなかった。



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