朝ごはんはドトールでAモーニングとCモーニング

しばらく虎ノ門に通うことになった。毎朝、地下鉄のホームに滑り込む銀色の電車に乗って、まるでどこか遠い国の首都に向かうような気分で出勤している。虎ノ門という場所には、なぜかマクドナルドがない。これは大きな問題ではないけれど、小さくて、静かに人を不安にさせる問題だ。

昔よく通っていたタリーズに足を向けたこともあった。だが、しばらくぶりに訪れてみると、セルフのお冷が消えていた。ありゃりゃ、と思った。小さな変化が、その場所との関係を微妙に変えてしまうことってある。

というわけで、ドトールに行くことにした。ドトールに行くと、たいてい僕はCモーニングを頼む。ホットドッグのやつだ。それとアイスコーヒー。冬でもアイスコーヒー。どうしてかと聞かれてもうまく答えられないけれど、そういうものだとしか言えない。

VISAタッチで支払うと、いまは20%ポイント還元らしい。上限700円まで。それを聞いて僕はすぐにVISAタッチを選んだ。こういうところで損をしないことが、都市で生きる小さな知恵ってやつだ。これでは、ますますタリーズに行く理由がなくなってしまう。

しばらく待っていると、僕のホットドッグがやってきた。ドトールでは、必ず手渡しで渡してくれる。カウンターに置かずに。これは地味だけれど、なかなか感心する習慣だ。コンビニなんかだと、手を差し出していてもお釣りやカードをトレーに置かれることがある。あれは、あまり気分の良いものじゃない。僕はかつて、それに対してじっと手を差し出したまま待ち続けたこともあるけれど、今となっては大人気なかったな、と思う(もちろんそれはコロナ前の話だ。今は誰だってトレーだ)。


冷たい水を一杯もらって、カウンターに腰を下ろす。ホットドッグにかぶりつくと、ソーセージがぷちんと音を立てるように弾けた。マスタードの酸味と、焼かれたパンの香ばしさがよく合う。ちなみに、ドトールのホットドッグにはケチャップが付いていない。最初から味が完成しているからだ。言えばもらえるらしいけれど、僕はこのままで十分だと思っている。きっとそれでいいのだ。

アイスコーヒーは、いつもの味。少し濃くて、少し苦くて、それがちょうど良い。これでこの価格なら、よくやっているなあと感心する。豆の値段もきっと上がっているのだろう。いずれ値上げされるかもしれないけれど、それも仕方がないことだ。

コーヒーを飲み終えたら、最後に冷たい水で口をすすいで席を立つ。コーヒーのあとは水を飲んだ方が、口の中に香りが残らないのだ。それから、「ありがとうございました」と店員が言ってくれるのを背中に受けながら店を出る。気持ちのいい挨拶だった。僕は、しばらくここに通うことになりそうだと思った。

それからというもの、僕は毎朝ドトールに立ち寄った。Cモーニングばかりを注文した。毎日同じものを食べるのは、父親譲りの習慣のようなものだと思う。いや、習性というべきかもしれない。

でもある朝、ふと思い立ってAモーニングにしてみた。レジで注文すると、店員の女性がほんの少しだけ「え?」という顔をした気がした。でも気のせいかもしれない。ハムと玉子とレタスがふわっとした丸いパンにはさまっていて、これがまたなかなかに美味しかった。作りたての温かみが、朝の胃袋にはちょうど良い。コンビニではこうはいかない。僕の知人も「ドトールに外れなし」と言っていた。たしかに、そうかもしれない。

そんなふうにして、僕の虎ノ門生活は続き、そしてやがて終わった。次の職場は有楽町だ。有楽町にはいつものマクドナルドがある。だからきっと、これからはドトールとマクドナルドの二本立てになるのだろう。人生にはそういうサイクルというか、パターンというか、気がつけば決まってしまう流れのようなものがある。そして僕は、その流れに乗って、またアイスコーヒーを飲むことになるのだ。

ドトールコーヒーショップ 虎ノ門桜田通り店カフェ / 虎ノ門ヒルズ駅虎ノ門駅霞ケ関駅
昼総合点★★☆☆☆ 2.5

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