【閉店】ほんとうに久しぶりの天下一品でこってりラーメンを

わははは。いや、これだよこれ。椎名誠が「にっぽん・食いしん坊放浪記」でも書きそうな、あの“懐かしさと今の自分の加齢っぷりがうっすら滲むラーメン回顧録”を、今ここ川崎銀柳街から銀座街のあたりで炸裂させるわけだ。

お昼にはちょいと早い。だが腹の虫は律儀で正直で、しかも無遠慮に鳴いたりする。というわけで、川崎の銀柳街から銀座街のあたりを、まるで野良猫のようにうろうろと徘徊する。うーん、何食べようかねぇと考えながら歩いていると──ふと、記憶の引き出しの奥のほうから「天下一品」という名前がぬるりと這い出てきた。

あれ?オレ最後に行ったのいつだっけ……とiPhoneの過去写真を漁ってみると、なんと2015年。7年もブランクが空いてるじゃないか。おいおい、何してたんだこの7年。刑務所にでも入ってたのかってぐらいご無沙汰だった。いや、別に避けてたわけでも、嫌いになったわけでもないのだ。むしろ“こってり”という食い物の系統の中では、心の琴線にグイグイ来る部類のはずなのに。

昔はさ、新宿歌舞伎町の天下一品に週一で通って、唐揚げ定食をかき込んでたんだよね。あの頃は胃袋に無限の可能性があった。今? 今はもう唐揚げ3個が限界。ついに胃袋にも“老い”がやってきたのだ。

などとしんみりしながら店の前に立つと、ちょうど昼前で空いていた。よし、突入。カウンターに陣取って「こってり」と生ビールを注文する。そう、今日は休み。昼ビールが許される聖なる日なのだ。

ビールをチビチビやっていると、やってきましたボクの「こってり」。うおっ、このビジュアル。懐かしさで涙腺がやや開く。思わず「元気だったか?」とか話しかけたくなるレベルの懐かしさ。

さっそくスープを一口。ああー……これだよこれ。誰が何と言おうと「天下一品のこってりは唯一無二」ってやつだ。スープというより、もはやソースに近い濃度で、レンゲの上でも自己主張が強い。そこに細すぎず太すぎず、ちょいとパッツリ系の麺がスープを絡め取って一緒に口の中へ。うまい、うまい、うまい。

チャーシューはというと、薄切りのあっさりタイプ。でもこのチャーシューがまた良い。しつこくないのに味は染みていて、口の中でふわっと溶けるタイプ。もっと食べたいな、と思わせるところがにくい。だが、だからと言ってチャーシュー麺にしてしまうと、なんだかバランスを崩す気がする。チャーシューが主役になりすぎて、こってりとの絶妙な関係が壊れそうで怖いのだ。難しいね、食のバランス感覚って。

なんやかんやで、気がつけば完食。そしてスープまでしっかり完飲。身体には良くないのは百も承知。でも止まらない。それが“こってり”ってやつなんだよね。

新しい店を開拓するのも旅の楽しみだが、こうして昔の味と再会するのもまた一興。定期的に「オレの胃袋原点回帰旅」ってやつをやらないといけないなと、ビールの残りをチビリとやりながら思った。

──ということで、本日もまた、うまいラーメンと少しだけ昔の自分に再会したのであった。

天下一品 川崎店ラーメン / 京急川崎駅川崎駅
昼総合点★★☆☆☆ 2.5

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