朝ラーメンを神座(かむくら)で。おいしいラーメン。

川崎に、ちょっとした用事があった。

朝早く、靴底に湿ったアスファルトの冷たさを感じながら歩いていったが、用事なんぞは拍子抜けするほどあっけなく終わってしまった。

胃袋が、ぽっかり空いていた。

「そういえば朝めしを食ってないな」と思い出した途端、腹の奥で太鼓が鳴り始める。ボウボウと、単調に、だが執拗に。

北口のホームに上がれば、蕎麦でもたぐるのが定石というものだろう。しかしそのとき、記憶の片隅から、ある名が浮かび上がった——神座。

「ああ、そうだ。あれがあったじゃないか」

蕎麦の代わりにラーメン。

むろん、朝からラーメンを啜ることへの背徳感はある。しかし、それ以上に、神座のスープには"正当な理由"がある。

券売機のボタンを押す指に一切の迷いはなかった。「おいしいラーメン」。その名に一点の曇りもない。

着席すれば、店内にはわずかに二人。静けさの中に湯気が立ちこめている。

ほどなくして、丼がやってくる。

スープの海に白菜がふわりと泳ぎ、麺がその下にたゆたっている。ひとさじすくって、口に運ぶ。

——熱い。実に、しっかりと熱い。

この熱さがなければ、神座ではない。ぬるいスープは魂を持たない。朝という時刻に、神座のスープは異様なほどに輪郭が際立っている。

白菜の甘味と、豚こまの滋味。

スープはコンソメのようでいて、コンソメではない。もっと風土的で、もっと雑多で、もっと誠実だ。

細い麺が、それらをまとめあげて、啜るたびにバランスの妙を舌に伝えてくる。

野菜が多いからと言って罪悪感が消えるわけではないが、「プラマイゼロ」という幻想の中に身をゆだねるのも悪くない。

気がつけば、丼は空になっていた。

スープの最後の一滴が、喉を通っていく。その瞬間、胃袋と心に同時に温もりが広がった。

朝の神座、これは“アリ”だ。

また来よう。

——理由なんて要らない。ただ、啜りたくなるだけなのだ。

どうとんぼり神座 アトレ川崎店ラーメン / 川崎駅京急川崎駅
昼総合点★★☆☆☆ 2.5

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