【閉店】蟹工船に乗ってカニ三昧(笑)五井 蟹工船

年が明けてしまった。気がついたらコートの襟を立てて、年賀状の束を抱えたまま駅のベンチに座っていた——というのはちょっと誇張だけれど、そんな気分だった。つまり僕は、しばらくブログの更新を怠っていた。うっかり、というやつだ。怠惰の厚い毛布にくるまっていたら、季節がひとつ越えてしまったというわけだ。

さて、昨年末に訪れた「蟹工船」の話をしよう。変なウィルスもようやく落ち着きの兆しを見せ、感染者数は片手で足りるくらいになっていた。その小さな隙間を縫うようにして、僕らはカミさんの実家と一緒に食事をすることにした。人と会う、というのは意外にタイミングを要する。だから今しかないと思ったのだ。

「蟹工船」はその名のとおり、蟹が主役だ。お店の中にはいけすがあり、水の中で脚をわさわさと動かしている蟹たちがいる。静かで、でもどこかざわめいている空間。まるで海辺の小さな劇場のようだ。

乾杯は、2年ぶりだった。コップの中でビールの泡がはじける音が、ちょっとだけ切なかった。義父さんは少しだけ老けたように見えた。でも、それは時間の自然な流れというやつで、僕たちの誰もそれを止めることはできない。何気ない会話が、胸の奥をやわらかく温めた。

料理のことは……正直、あまり覚えていない。覚えているのは、黙々と蟹をほじる代わりに、いつになくたくさん話したことだ。カニというのは、普通は人を無口にする。でもこの日は違った。話したいことが、ずっと胸の奥で渋滞していたのだろう。言葉は蟹の身よりも、よくほぐれていた。



「会って話す」というのは、やはり大事だ。声の抑揚や、空気の重みや、表情のちょっとした揺れを共有できるというのは、テキストでは代えがたいものがある。

次にいつ来れるかは分からない。でもできるだけ顔を出そうと思う。僕の故郷の山口にも、もう3年帰っていない。年を越した今、あの町の潮の香りが、妙に恋しい気がしている。

蟹工船 五井店かに / 五井駅
昼総合点★★☆☆☆ 2.5

コメント