【閉店】和食の名店 青山杏亭で最後のお料理をいただきました
青山の裏通りにひっそりと佇む「杏亭」。シェフとはランニング仲間としてご縁があり、打ち上げや忘年会でたびたびお世話になったお店だ。そんな杏亭が、以前から告げられていた通り、今月をもって閉店することになった。最後にもう一度、あの料理を味わいたくて足を運んだ。
緊急事態宣言が明けて迎えた金曜日。青山の街は思いのほか静かで、人の流れもまだ慎重さを保っている。外食ラッシュを予想していたけれど、皆まだ一歩引いているのかもしれない。自宅から青山まで飲みに来る、そんな時間の使い方も、これが最後になりそうだ。
あの分かりづらいビルの階段を上るのも、これで終わりかと思うと少し感傷的になる。扉を開けると、いつものシェフが変わらぬ笑顔で迎えてくれる。その変わらなさが、なんだか嬉しい。
料理はいつも通り、どこか控えめでいて、芯の通った味わい。ビールから始まり、日本酒をゆっくりと重ねていくうちに、季節の香りが次々と運ばれてくる。
締めは、松茸の土鍋ご飯。芳醇な香りとふっくらとした米の旨みが、口の中いっぱいに広がった。おにぎりにして包んでくれたそれを手に、また来たいなと思ってしまう。
「走り抜けたから、ちょっと休もうと思ってね」とシェフ。穏やかな語り口のなかに、これまで積み重ねてきた時間の重みが滲んでいた。
惜しまれつつ幕を下ろす名店。杏亭の記憶は、あの味と香りとともに、青山の空気の中にそっと残っていくのだろう。
ごちそうさまでした。そして、ありがとうございました。









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