川崎 喜久庵 で 天もり蕎麦

蕎麦が食べたくなるときというのは、だいたい心が「つるっと」したものを欲しているときだ。ラーメンほどガツンと来なくて、うどんほどモチモチでもない。あの細さ、あの歯ざわり、あの喉ごし。まさに「つるっと」の王者。

というわけで今日は昼から蕎麦の気分。足は勝手に近所の京町商店街に向かっていた。商店街といってもシャッターが半分くらい閉まっていて、ところどころに八百屋と花屋とパン屋がポツポツある、そういう昔ながらの通りである。

さて、お目当ての蕎麦屋に行ってみたら、なんと「本日休業」の札。がーんである。お腹は蕎麦に向かって助走をつけていたのに、いきなり壁ドンである。

そこで第二候補の蕎麦屋「喜久庵」へ。店名の「喜」は、あの七が三つ並ぶやつだ。PCでは書けないけど、読むと「き」になる不思議な漢字である。

店の前まで行くと「新そば」の貼り紙がしてある。おお、これは縁起がいい。まるで年末ジャンボを見つけたような気分だ。さっそく入ってみる。

店内は年季が入った木の香りが漂う。テーブルが数卓と、小上がりの座敷もある。壁一面に漫画がぎっしりと詰まっていて、蕎麦屋というよりミニ漫画喫茶である。

席に着いて、さあ何にしようかとメニューを開くと、ありましたよ「天もり 800円」。やすい!今どきワンコインちょいで海老と蕎麦がいただけるなんて、涙が出るほどありがたい。

注文してから店内をキョロキョロと観察。お客さんは近所のブルーカラー風の方々が数人。皆テレビをぼんやり眺めながら黙々と蕎麦をすすっている。あの静けさがいい。蕎麦屋には無駄なおしゃべりはいらないのだ。

やがて来ました、ボクの天もり。

木のせいろに上品に盛られた新そばと、別皿の天ぷら。海老、ナス、かぼちゃ、ピーマン、キスあたりが整列している。まずは蕎麦から。つゆにわさびをちょいと。

ズズズズッ。

うーむ、新そば、いい香りだ。香りが鼻に抜けていく感じがして、喉に吸い込まれていく蕎麦の細さがまたいい。ズズズッ。ズズズズッ。無限にいける気がする。

続いて天ぷら。海老、サクッ。おお。衣が軽い。ふんわりしていて重くない。ナス、とろり。キス、ほろり。ピーマン、ちょっとほろ苦いのが良い。かぼちゃ、ホクホク。

で、あっという間に全部なくなった。いや、おかわりしたいぐらいだが、ここはぐっと我慢するのが大人の昼蕎麦。

最後にそば湯が登場。

蕎麦のエッセンスが詰まった乳白色の液体と、ちょいと残ったつゆを合わせてグビリ。あ〜〜〜〜、落ち着くぅ〜。蕎麦の締めはこれがなきゃいかん。

ごちそうさまでした。800円でここまで癒されるってのは、もうこれは立派なセラピーだ。

店を出て、商店街を戻る。ちょっとだけ、足取りが軽くなっていた。蕎麦ってのは、胃じゃなくて、心の中を「するっ」と通っていくんだな、たぶん。

喜久庵そば(蕎麦) / 川崎新町駅八丁畷駅鶴見市場駅
昼総合点★★☆☆☆ 2.5

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