うどんでも食べとこうか。はなまるうどんできつねうどん。

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食欲がない、というのはなかなかやっかいな現象だ。とくにこの東京の夏の、じわじわと身体の内側に忍び寄ってくるような湿気の多い暑さのなかでは、それがいっそう顕著になる。僕はオフィスのデスクにぼんやりと座って、脳の棚をひとつひとつ開けていったのだけれど、「食べたいもの」というラベルのついた棚の中は、すっかり空っぽだった。干からびたレタスの切れ端さえ見当たらなかった。

それでも、なにかを食べなければ身体がもたない。というわけで、近場で一番無難そうな選択肢、はなまるうどんに向かうことにした。銀座ファイブには、タイ料理もあればベトナム料理もあるし、イタリアンだって、蕎麦だって選べる。でも今日はフォーのやさしい香りにも心を動かされず、うどんにしておこうと思った。いわば白い紙に鉛筆で軽く線を引くような、そういう昼食がふさわしい気がしたのだ。

はなまるの店内はがらんとしていた。あの、少し前まで行列を作っていたOLたちはどこへ行ってしまったのだろう。季節が変われば風も変わる。そういうことかもしれない。

レジで「きつねうどん」を頼み、無意識に海老天をトレイに乗せていた。

鶏天がなかったのが理由だったのかもしれないけれど、正直、僕にはよくわからなかった。手が勝手に動いた、ということにしておこう。

きつねうどんに海老天。あまり整合性のない取り合わせだった。たとえばジャズの即興セッションで、ピアニストとドラマーがまったく違う方向を向いてしまったような、そんな不協和音を感じながら、僕は一口すすってみた。

…ん?味が薄い。というか、味がしない。出汁が、舌の上で空気に変わっていくような感覚。僕の味覚が夏バテしているのか、それともただの思い過ごしなのか。どちらにせよ、完食するのにそれほど時間はかからなかった。

「もう、この年齢になると、美味しいものを少しだけ食べる、というのがちょうどいいのかもしれないな」

そう独りごちて、僕は午後の仕事に戻った。空になった胃袋のなかで、きつねと海老天が静かに会話を交わしているような、そんな気がした。

はなまるうどん 銀座ファイブ店うどん / 銀座駅有楽町駅日比谷駅
昼総合点★★☆☆☆ 2.5

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