寒かったので近場で。都久志屋で鶏のどんぶり二つ。

うう、寒い。手の先がかじかんで、コートのポケットから出すのも億劫だ。こういう日は、遠くに行こうなんて気にはならない。だからオフィスから徒歩1分のビルに向かうことにした。風も強く、信号待ちの間に心が折れそうになる。街路樹の葉はとっくに落ちてしまって、枝が細く震えていた。

そのビルは、ちょっとしたランチタワーのようなもので、牛、豚、魚、鶏と、フロアごとにジャンルが分かれている。まるで食のテーマパークのようだ。かつてはガード下にあったのだが、耐震工事の影響でこちらに引っ越してきたという。でも不思議なことに、工事が終わった今、元の店も営業している。何かの輪廻転生みたいだ。

エレベーターで最上階まで上がる。ランチ時だというのに、店内は静まり返っている。奥のテーブル席に一人だけ、サラリーマン風の男がスマホをいじっている。彼のコートには薄っすらと埃が積もっていて、それが少し哀しかった。

メニューを開くと、親子丼がこちらを見ていた。唐揚げも気になる。でも両方は無理か……と思ったその時、目に飛び込んできたのが「ハーフ&ハーフ丼」の文字だった。こんな寒い日に、迷いを断ち切ってくれる選択肢があるのはありがたい。親子丼と唐揚げ丼のセットを注文する。

しばらくして、丼が運ばれてきた。

湯気が立ち上るその様子は、小さな火山のようでもあり、また一種の静かな詩のようでもあった。まずは唐揚げに箸を伸ばす。カラリと揚がっていて、レンジの気配はない。だけど、ご飯に乗せて「丼」にする意味はよくわからない。別皿でもよかったのでは、と思う。まあ、それでも美味しいのだけれど。

次に親子丼。つゆがよく染みていて、味は濃い。白米がどんどん吸い込まれていく。まるで、何か過去の記憶までも一緒に食べてしまうような気がする。気づけば、すべてを平らげていた。満腹感よりも、静かな達成感が心に残る。

ふと顔を上げると、知らぬ間に数人の客が入ってきていた。静かなランチタイムの中に、わずかなざわめきが生まれていた。この店、大丈夫かな。こんなに空いていて、ちゃんとやっていけるのだろうか。でも、それは僕が心配することじゃない。世界はいつも、どこかで回っている。そしてたいていのことは、僕の知らないところでなんとかなるようにできているのだ。

都久志屋焼き鳥 / 日比谷駅有楽町駅銀座駅
昼総合点★★☆☆☆ 2.5

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