【閉店】銀座 東京銀座食堂で海鮮丼
メロスは昼餉を決めかねていた。
空腹のまま、銀座インズを彷徨していた。何を食べるか、未だ決断できずにいたのだ。
そのとき、不意に──可憐なる少女が、風のようにチラシを差し出した。
「これは……?」
メロスは受け取り、目を通す。虎杖(いたどり)なる新しき店の案内であった。
「おお、虎杖か。かの名店に相違ないな」
そう口にすれば、少女はぱっと顔を輝かせ、
「そうなんですっ!」と笑みを咲かせた。
メロスは、その笑顔に心を打たれた。ならば行こう、この一歩もまた、使命である。
かくしてメロスは店へ向かった。
店内は清らかに新しく、まるでまだ慣れぬ兵たちが初陣を迎えているようだった。
席に着き、海鮮丼を所望し、静かにその到来を待った。
人々は賑わい、特に若き女性の姿も多い。
やがて、海鮮丼はその姿を現した。
紅のマグロ、白き身、帆立、赤貝、穴子、数の子、飛子──まるで七つの宝石が並び立つかのよう。
メロスは卵を割り、全てを混ぜ合わせた。
口にすれば、喜悦の波が押し寄せる。
異なる食感が奏でる交響は、まさに饗宴。
飛子は小さき命の鼓動の如く、ぷちぷちと響いた。
「美味也……」
虎杖よ、その名を未来に刻め。
この一膳は、ただの食ではない、感動であった。
メロスは立ち上がり、深く礼をした。
「ごちそうさまでした」
そして再び歩き出すのだった。満ち足りた心を胸に、昼の陽の下を。

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