【閉店】新橋 大阪王将 で 餃子飲み
虎ノ門にて所用を済ませたのち、私は新橋まで足を延ばした。日が落ちかけた街を歩きながら、ふと「このまま真っ直ぐ家に帰るのは、何やら人生の損失であるような気がする」との思いが胸中を過ぎった。かくして私は、大阪王将の暖簾をくぐることにしたのである。
店内は思いのほか狭隘で、雑踏の余韻を残したようなざわめきが満ちていた。空いていたカウンター席に腰を下ろし、手元のメニューを繰る。すると、驚いたことに料理の数が随分と限られている。記憶の中の“食○ログ”には、もっと賑やかな料理群が踊っていたはずだ。経営方針の変革か、あるいは単なる気紛れか。いずれにせよ、詮索したところで空腹は癒えぬ。
餃子、もやしサラダ、そして生ビールを所望する。ビールが届き、一口。ぷはぁ、と喉が声をあげる。「今日もよく生き延びたな、我よ」と独りごちて、内なる疲労と和解する。続いてもやしサラダが運ばれる。塩気が強く、幾分か舌を刺す。だがこの刺々しさすらも、人生の不可避な部分のように感じられて妙に納得してしまう。
やがて主役たる餃子が舞台に登場する。
皮は香ばしく、餡は平凡で、故にこそ裏切らぬ味わいである。「餃子とはかくあるべし」といった風情。が、それでもやはり心は満たされぬ。私は再びメニューをめくった。唐揚げが、無い。かつては確かに存在した気がするのだが、今やその影も形も見当たらぬ。幻を見ていたのか。あるいは、それもまたこの世の無常であろうか。
狭い店内の喧騒が、次第に耳に馴染んできたころ、私は己の椅子を静かに引いた。ここは「さっと食べて、さっと立ち去る」場所なのだろう。余韻を持ち帰るには向かぬが、現実と軽く握手するには充分だ。
「ごちそうさま」と口にして、私はまた、夜の街へと溶けていった。

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