蒲田 春香園で餃子
ランニングで汗をたっぷりかいた帰り道、なんとなく足が蒲田の春香園へ向かっていた。自分でも理由はよくわからない。ただ、体の奥で何かが「ここだ」とつぶやいた気がしたのだ。
暖簾をくぐると、油と醤油が混じったような、遠い昔の放課後に嗅いだ町中華の匂いがふっと鼻をくすぐった。席につき、餃子を頼む。ほどなくして運ばれてきたそれは、皮が薄くパリッと焼き上がり、箸で持ち上げると中から熱い肉汁がこぼれそうになる。
にんにくと生姜がきっぱりと効いた餡が、噛むたびに口いっぱいに広がる。僕はそれをキンキンに冷えたビールで流し込み、喉の奥で小さくため息をついた。外ではまだ夜風が湿り気を帯びて漂っている。
その瞬間、ランニングで溜まった疲れも、頭の片隅にあった細々した不安も、すっと溶けていった。まるで、冷たいビールの泡にすべてが包み込まれていくみたいに。
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