【閉店】大きな鶏南蛮を食べに鳥酎へ。虎ノ門 鳥酎

虎ノ門での生活も、今日で一区切りだ。なんとなく、気持ちのどこかにぽっかりと穴が開いたような感覚がある。季節の変わり目でもないし、空模様が特別なわけでもない。ただ、日常というものが静かに背中を向けていく、そんな日だった。

せっかくなので、まだ行ったことのない店に足を運んでみることにした。スマホでいくつか検索してみて、心に引っかかったのが「鳥酎」という名前の店だった。焼き鳥の「鳥」と焼酎の「酎」だろうか。シンプルで、でもどこか懐かしい響きがあった。

場所は長崎飯店のすぐ隣だ。扉を開けて店に入ると、床がすこし滑りやすくて、危うくスニーカーの底が空振りするところだった。そんな自分に小さく笑ってから、テーブル席に腰を下ろす。メニューを一瞥し、迷うことなく「漬け鳥南蛮」を頼んだ。

あまり待つこともなく、ボクの前に鶏南蛮が置かれる。大きめの皿に、衣をまとった鶏たちが、整然と、しかしどこか自由に並んでいる。

まずはひと口。なるほど、「南蛮」という言葉から想像するよりも、ずっとしっかりとタレに浸かっている。甘酸っぱさに加えて、どこか醤油のような奥行きのある塩気があって、しかも表面はカリッとしているのに中はやわらかい。うん、これはいい鶏だ。米と一緒に食べると、その味がふわっと広がって、ボクの箸は止まらなくなる。

手作り感のあるタルタルソースがまた良かった。マヨネーズの酸味と卵のまろやかさ、それに細かく刻まれたピクルスのアクセント。タレの濃さとは対照的な、優しさを感じる味だった。

最初は、この量を食べ切れるかちょっと心配だった。でもそんな心配はどこかに飛んでいった。気がつけば皿は空っぽで、ボクはコップの水をひと口飲み、静かに満足していた。

これで800円だというのだから、驚くほかない。他のメニューも気になる。次は夜に、焼酎をちびちびやりながら串をつまむのもいいかもしれない。

虎ノ門の最後の日に、こういう昼飯に出会えたのは、たぶん、何かの巡り合わせだ。別れには静かな祝福が似合う。ボクはそんな気分で、店を後にした。

鳥酎 虎ノ門焼き鳥 / 虎ノ門駅虎ノ門ヒルズ駅内幸町駅
昼総合点★★☆☆☆ 2.5

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